ゆうちょファイン○○号掲載
やまだ・ごろう
1958年12月5日生まれ。東京都出身、上智大学文学部卒業。出版社に勤務し、現在は若者向け情報誌の編集長を務めるかたわら、評論家としての執筆活動やテレビ出演など幅広く活躍中。
雑誌編集者・評論家
山田 五郎さん
 
精神的な「無理」ができるのは、
ハングリーな若い人だけの特権です。
僕が二十歳になったのは、大学1年の終わり頃。当時は本当に、お金が無かったですね。レコード一枚買うのも、相当な苦労。金が無い上に、欲しい物は探さなきゃみつからない。でも、探す過程でいろいろな所に行く、行った先で目当てのものとは別の物に出会ったり、知り合いができたり、そういう楽しみがあった。今は、家の中でたいていの物がインターネットで買える。便利だけど、つまらないですよ。今の若い人は気の毒だと思います。
僕たちの若い頃、'70年代というのは、「しらけ世代」と言われた「無理しない」時代だったけれど、文化的なことに関しては、まだ「無理した方が偉い」という風潮がありました。僕は当時、現代音楽にハマっていたんですが、みんな、よくわからないなりに、難しい映画を一生懸命見たり、古典や洋書を無理して読んだりしたんです。 それはある種の「見栄」。バブル期になるとそれが外車やブランド物になり、消費や恋愛で無理や背伸びをするようになった。
今は、世の中全体が「無理しない」風潮で、若い人たちは物質的にも精神的にも無理をしない。情報も、金も、使い方をマスターする前にふんだんにあたえられる。でも使い方を知らなければ、振り回されるだけですよ。
だから若い時には、金銭的に余裕があれば貯金をして余裕の無い状態にしたり、情報をある程度シャットアウトしたりして、あえてハングリーな状況をつくることが必要かもしれません。遊ぶのは、年取ってからいくらでもできる。若い時には、精神的な無理や背伸びを、ぜひしてほしいですね。(談)
オーストリアのザルツブルク大学に留学し、西洋美術史を勉強していた時の一枚。山田さんは、当時21歳。留学生仲間で、写真を勉強していたアメリカが撮影したものだ。
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